学習空間NOAH

お問い合わせ
02-712-8101/8102
13:00〜21:00 月~土

教育コラム 「先生、その教育もう古いです!」

第1回 「古い教育」って何だ?

昭和の教室

 今回から始まる教育コラム「先生、その教育もう古いです!」。第1回は、これから日本の教育がどのような方向に進んでいるのかを紹介したいと思います。
 今までの日本の教育は、「知識の量が多い」「処理のスピードが速い」ことが求められていて、それは「知識偏重」「詰め込み」という問題点を抱えていましたが、現在もその根本は変わらないまま続いています。
 しかしITが急速に進化する現代では、何かを調べようと思えばググればいいし、EXCELを使えば瞬時に計算は処理できます。求められているのは知識量や処理能力ではなく、その次の段階なのです。それが何なのかを考えるにあたり、「学力の3要素」を確認しましょう。これは学力を測るための指針として、学校教育基本法に定められているものです。

① 知識・技能
② 思考力・判断力・表現力
③ 主体的に学習に取り組む態度


 ①は知識量や処理能力等、私たちが知っている「今までの学力」です。それに対して②は、「その知識を使ってどう考えるか」を、例えば「あなたの意見を述べなさい」という形で表すことが求められます。また③では、今までの学びの記録や課外活動等を基に、積極的に学習する姿勢が評価の対象となります。
 そして①だけでなく②や③も入試で測るよう、大学入試が大きく変化しようとしています。これが最近ニュースでよく登場する「2020年大学入試改革」の根底にあるのです。
 今まで私たち学習塾はテストに向けて、「どれだけ覚えているか」「どれだけ正確にできるか」を子どもたちにに求めてきました。しかし大学入試が変わることになると、これからは②や③の要素にも対応できるような指導が私たちに求められるのです。
 ここで間違えてはいけないのが、①の要素は否定されていないということです。以前導入された「ゆとり教育」では①の部分が削減されて、「学力低下」という問題を招きました。しかしこれから目指す教育では、①を前提に②や③に対応することが求められているのです。
 つまり「古い教育」は①に偏った指導、「新しい教育」は①を前提として②や③を伸ばす指導、と考えるべきなのです。そしてそれは学校現場だけでなく、学習塾等でも求められます。これからの数年間は、様々な教育現場で大きな転換点を迎えることになるでしょう。

第2回 日本の英語教育はどう変わる?

英語学習

 以前から言われていたことですが、今までの日本の英語教育は文法を重視し、会話を軽視していたから、実用的な英語力が身に付かないと批判されていました。グローバル化が急速に進行し、国際的な競争力が求められる現代の世界において、英語が使えないことは致命的な問題です。
 この状況を改善するために、小学校から英語が本格的に導入されましたが、大学入試も大きく変わりつつあります。その中でも話題となっているのが、センター試験の代わりに導入される「大学入学共通テスト(仮称)」で、民間が実施する資格・検定試験を活用することです。具体的には、英検やTOEIC、TOEFLだけでなく、GTECのような新しい検定試験が挙げられます。
 ここでポイントになるのが、下の段にも掲げた「読む・聞く・話す・書く」の4技能で、現代の英語学習ではこの4つのスキルをまんべんなく身につけることが求められています。今回の大学入試改革でもこの4技能を測れるよう、外部の試験を利用することが検討されているのです。

英語の4技能・・・読む・聞く・話す・書く

 この変化に対応するために、学校では上記の4つのスキルを身に付けられるような指導が求められています。小・中・高を通し、今までの文法一辺倒の指導内容から脱却し、今まで以上に生徒が英語に興味を持ち、実用的な力を身に付けられるようなアプローチが必要とされています。
 しかしそのような指導に対応できる教員は少ないのが現状で、特に公教育の現場では教員の力量の差が大きく表れる可能性があります。私学においても、意欲的に改革を進める学校とそうでない学校の差が見えつつあります。そうなると各家庭においては、「学校選び」が今まで以上に重要になります。今までとは全く異なる英語教育を導入している学校でどのような授業が展開されているのかを、具体的に知っておきたいものです。
 そして入試だけに目を向けるのではなく、日頃からどのように学習するかを意識すべきです。特に「話す」ことについては、前回お話した「学力の3要素」の中にある「主体的に学習に取り組む態度」に直結するポイントになるので、小学生のときから様々な人たちと積極的にコミュニケーションを図ることは、その後に様々な形で役立つはずです。
 昔と同じことをしていたら、世界の変化に対応できません。海外にいても、日本にいるのと同じように過ごしていたらアドバンテージは生み出せません。今ここでどう過ごすかによって、お子様の将来は大きく変わるかもしれないのです。

第3回 記述式の問題が増加する!

記述

 大学入試改革での大きな変更点として、現行の「センター試験」が「大学入学共通テスト」に変わることが発表されていますが、この中で注目されているのが、今までのマークシート式だけでなく、新たに国語・数学で記述式の問題が登場することです。
 ここでのポイントは、「知識だけでなく思考力・表現力も問うこと」と、「学んだことを実生活に結びつけて活用すること」です。今までのマークシート式の問題では、「知識の量」を問うことはできても「思考の質」を見ることは難しかったので、記述式の問題を加えることによってバランス良く学力を測れるようになります。
 しかしこの変更に対して疑問の声も上がっています。例えば「国公立大学では二次試験を課しているので、そこで記述式の問題が出題すれば十分だ」とか、「記述式の採点は手間がかかるので人員・経費の負担が大きくなり、結果が出るまで時間がかかる」、あるいは「記述式の問題は採点する人によって点数に差が生じるので、公平でなくなる」という意見が出されています。これらの批判は、今までの方式との比較を考えれば当然ですが、逆にこの議論から「日本の問題点」が見えてくるとも考えられます。
 以前から「点数は取れても実践的に使えない」「自分の意見を話すことができない」ことが、様々な場面で日本人の一般的な弱点として表れていて、その原因として入学試験での知識偏重の傾向が問題視されていました。グローバル化が進む世界において日本が発展する(というより生き残る)ためには、教育の手法を改革するのは必然であり、その一環として記述式の問題が増加するのは自然の流れなのです。現に中学入試では、随分前から記述式の問題が増加する傾向にあります。
 また「効率性」や「公平性」を重視する考え方は日本人の中に割と強くありますが、あくまでもそれは規格品を生産する場では重要であっても、教育においてはそれ以外の側面も大事にされるべきです。時間や手間をかけてでも本質を追究する姿勢は、新しいものを生み出すときや難しい問題を解決するときに必要となるものです。
 今まで日本が発展してきた時代では、今回の改革で取り入れられようとしている「思考力・表現力」はあまり重要視されていませんでした。しかしそれは数十年前の話であり、今を生きる私たちは現実を直視し、未来を生きる子どもたちのために考え方をアップデートしなければいけないのです。この教育改革は、私たち大人の思考にも改革を迫っているのかもしれません。

【第4回】 子どもたちには時間がない?

時間割

 経済協力開発機構(OECD)が先日発表した、2030年の教育のあり方を展望する「エデュケーション2030」は、これからの生徒は「新しい価値を創造する」「緊張とジレンマを調和する」「責任を取る」等の「問題解決型能力」を身につけるべきと提言しています。2020年から日本で実施される「大学入試改革」は、この流れに沿った動きと言えるでしょう。
 さてこの提言では、世界的な傾向として生徒たちに「学習や睡眠、運動をする十分な時間がない」と指摘し、「長時間の学習から質の高い学習に変える時が来た」として、学校のカリキュラムを見直すよう求めています。新しい能力を身に付ける(=新しいプログラムを追加する)には、今までのプログラムを整理しない限り、やるべきことが飽和してしまい、子どもたちへの負荷はますます強くなってしまいます。
 しかしこれは学校だけの問題ではないと、私は感じています。小学校低学年から様々な習い事をしている子どもたちを見ると、時間的な余裕がなく疲れてしまい、学習に限らず様々な物事に対してネガティブな感情を持っているケースが少なからず見られます。我が子に多くのチャンスを与えたいという親心が、逆にお子様の健全な成長を阻害してしまう可能性があるのです。

① 知識・技能
② 思考力・判断力・表現力
③ 主体的に学習に取り組む態度


 ここで以前ご紹介した「学力の3要素」を、改めて確認しましょう。今までの日本の教育は①を重視していましたが、これからは②や③(前述の「問題解決型能力」につながるポイントです)も学力として求められます。
 また「効率性」や「公平性」を重視する考え方は日本人の中に割と強くありますが、あくまでもそれは規格品を生産する場では重要であっても、教育においてはそれ以外の側面も大事にされるべきです。時間や手間をかけてでも本質を追究する姿勢は、新しいものを生み出すときや難しい問題を解決するときに必要となるものです。
 しかし余裕がなく疲れている子どもたちは、②が鈍り、③が弱くなり、結果的に①が身に付かなくなります。よく私たち日本人は「努力した分だけ結果はついてくる」と、多くの時間をかけて取り組むことを美徳とする傾向がありますが、子どもに対してはそれぞれの成長段階やタイミングを踏まえたアプローチが必要なのです。
 私たち学習塾も、ただ単に勉強をやらせるのではなく、「興味を持てる授業」や「効果的な学習方法」等、「質の高い学習」について真剣に考え、実践すべきです。大量の課題を与えて勉強漬けにすれば、ご家庭は安心するかもしれませんが、それでは①だけに偏り、未来を生きる能力は身に付きません。
 急速に変化する世界において、人々に必要とされる能力も変化しています。私たち大人は、旧来の方法論を押し付け、目先の結果ばかりにこだわるのではなく、未来型の能力をバランスよく子どもたちが備えられるよう、導いていきたいものです。

【第5回】 世界で通用する英語力を身に付けるには?

英会話

 海外の学校に通っていた生徒を対象にした「帰国生入試」では、一般入試と異なる科目(例えば作文・小論文等)を取り入れることがあり、特に英語については高いレベルの問題を課したり、大学入試ではTOEFL等のスコア提出が必須となる動きもあります。また中学入試では英語入試を導入する学校がここ数年で大幅に増加しています。
 このような入試は、主にインター校に通う生徒が対象になるので、それ以外の方には関係ないように見えますが、例えば大学入試の場合、帰国生入試がAO入試に衣替えし国内生も対象になるケースが見られ、中学入試でも同様のケースが見られます。求められるのは「どこにいたか」ではなく、「どのような英語力を身につけたか」なのです。
 ここでカギになるのが、「読む・聞く・話す・書く」の4技能に対する取り組みです。今までの日本の英語教育は、文法や単語の暗記を重視する分、実用性に欠けるのが課題でした。そこでこれからの入試は4技能をバランスよく問う形式に移行しつつあるのです。
 例えば、中学受験で導入されている英語入試では、従来の文法・読解問題だけでなく、エッセイライティングでは自分の考えを述べることも要求され、筆記試験以外で英語での面接を実施している学校も見受けられます。よく「英検何級があればいいですか?」と質問を受けることがありますが、多くの入試では知識の量や正しい運用能力を前提として思考力やコミュニケーション能力も見られるので、インター校に通った経験がないと対応が難しいでしょう。
 しかしここでのポイントは、「入試のために何をするか」ではありません。入試はあくまでも通過点、入学後にどのような力を身につけられるかがより大事です。たとえ小学生の頃に英語を話せたとしても、その後に必要な知識を身につけなければ、社会に出てから役に立ちません。ただし小さい頃から外国語に慣れておけばその後の吸収力は高くなりますので、(英語圏でなくても)海外に住んでいる環境上の利点は生かしたいものです。
 未来を生きる子どもたちには、私たちが求められていた以上の語学力が要求されます。そのすべてを小中学生のうちに身につける必要はありませんが、今のうちにいろいろな経験をしておけば可能性は広がります。まずは子どもたちが外国語に興味を持ち楽しく学習できるような環境を用意すること。そして実際に様々な人々と話す機会を持つこと。身近な目標としての英検取得だけに限定せず、将来に向けての視点を持って大人側は考えたいものです。

【第6回】 論述力が問われる前に読解力が問題に?

読解力?

 2020年から導入される大学入試改革より、「知識・技術」だけでなく「思考力・判断力・表現力」等の学力も重要視され、今までとは異なる出題形式も登場します。現在文科省から発表されている国語の問題例を見ると、資料を読んでそれに対する自分の考えを述べる問題があり、マークシート方式で実施されている現行のセンター試験に新しい側面が加わることになります。
 このような論述問題に対しては、「大量の問題を反復演習する」「解法パターンに当てはめる」ような今までのテクニックが通用しない以上、これから様々な教育現場で試行錯誤が繰り広げられる可能性があります。そうなるとご家庭としては「何をすればいいのか?」と不安になるかもしれませんが、実はそれ以前に重要な問題が最近登場しているのです。
 それは「読解力の低下」です。昨年発表された国立情報学研究所の調査結果によると、2~3行程度の課題文および質問の内容を把握できない中高生が相当数いることが明らかになりました。以前に比べて生徒の読解力が低下していることは私も授業を通して感じていたのですが、やはりそれが現実なのです。そしてこれは国語だけでなく、他教科を学習する際の理解度低下にもつながっているので、根本的かつ深刻な問題なのです。
 文章の内容を理解できない要因は色々ありますが、「文章を読むことに慣れていない」ことが大きな原因かと思われます。コミュニケーション手段がSNS中心になると、狭い世界の中で少しの言葉だけしか使わない生活になるから、文章を読むことが面倒になり、学年が上がれば伸びるはずの語彙力や読解力が身につかなくなります。特に中学生になると、スマホを使ってLINE等で友達と交流する機会が多くなるので、その傾向に拍車がかかります。
 また海外では、どうしても日本語に触れる機会が少なくなりがちです。特に小学校低学年からインター校に通っている場合、保護者の方が早い段階から取り組ませないと、漢字を嫌がり、日本語の文章を読まない、基礎的な国語力に不安を抱える生徒になってしまいます。ご家庭での読み聞かせ、読書の習慣、塾での学習等、いろいろなツールを複数組み合わせて、お子様が国語に対して抵抗感を持つ前に積極的に動くことがポイントです。
 国語力が伸びるには時間がかかるので、長期的な取り組みが必要です。またこれからはテクニックだけでは通用しない出題形式がどの教科でも多くなり、論述問題はその一環であるとも言えます。しっかりと読解力を身につけ、その上で論述問題や作文・小論文に対応するには、時代や環境の差も念頭に入れながら、意識的に大人側が導いていきたいものです。

【第7回】 帰国生は大学入試改革でチャンスが拡大?

チャンスをGET!

 大学入試改革からの変化を見据え、私立中高一貫校をはじめとする各高校は、現行のカリキュラムに新しい要素(例えばアクティブラーニングや英語による授業等)を加え、今までより実用的かつ魅力的な学習内容を生み出そうとしています。そのような新しい教育に対応できる優秀な生徒を集めることも同時にポイントになり、ここで帰国生が注目されているのです。
 分かりやすい例として、中学入試で英語を導入する学校がこの数年間で大幅に増加したことが挙げられます。英語を話すことができる生徒の人数が増えれば、周りの生徒が影響を受け、全体の学力レベルが上がり、大学への合格実績が向上します。そして大学入試改革以降、実践的な英語力が更に求められるようになるので、そのような学校はますます有利になるでしょう。
 英語力だけではありません。異国の地で様々な人々と触れ合ってきた帰国生は、その経験を生かして学校内で先頭に立って活躍することが多々あります。ここで発揮されるコミュニケーション能力は、「学力の3要素」の一つである「主体的に学習に取り組む態度」の「協働性」において、ますます重要度が高くなります。
 このような経験や能力は、書類選考では提出書類・志望理由書・自己アピール等、筆記試験では作文や小論文、そして面接で評価されます。特に作文や面接は、帰国生入試では学科試験と共に実施されているケースが多いのです。そしてこれらの内容は、これからの大学入試改革で多様化する選抜方法の一つとして重要な役割を担います。これは帰国生にとってプラスの要因になると言えます。
 ただしここで注意しなければいけないことは、単に「帰国生だから入試で有利になる」とのではなく、「学校側が求めているもの」つまり「これからの世界において必要とされている能力」を有しているかどうかがポイントになる、ということです。それは英語力だけでなく、コミュニケーション能力だけでなく、思考力やアウトプット能力等も含まれます。もちろんこれらを支える学力(知識・技能)は大前提となります。
 これからの時代を生きる子どもたちが身につけるべき能力は、取り巻く世界が広がり、技術が高度化する中で、私たち大人が育ってきた時代よりも多岐にわたります。子どもたちが現時点ですべての能力を身につける必要はありませんが、この海外生活を通していろいろな力を吸収できる下地を養えるかどうかは、周りの大人たちがどのように関わるかによって大きく変わります。帰国生入試は、そのきっかけの一つになるかもしれませんが、その先こそが重要なのです。

【第8回】 インター校生は大学入試改革で有利になる?

プレゼン

 前回のコラムでは、大学入試改革と帰国生入試の関係を話しましたが、さらに絞って話をすると、インター校に通った経験のある生徒は、今回の大学入試改革で有利になると考えられます。ポイントは次の通りです。

① 実用的な英語力が求められる
 世界的により実用的な英語力が必要とされる中、大学入試でもTOEFLやGTEC等の民間試験を導入する可能性が出ています。これは国内生にとっては高いハードルですが、日頃から英語で学習してきたインター校生はチャンスが広がります。

② 思考力を問われる形式に強い
 インター校での授業では、ただ単に答えを覚えるのではなく、「なぜそうなるのか」が問われる機会が多くなります。日頃からそのような意識を持って問題に取り組むので、論理的な思考力が養われます。

③ 表現力で経験の差が出る
 インター校ではプレゼン等で発表する機会が多いだけでなく、他の生徒の発表を聞く機会も得られるので、様々な例を見ることができます。このような表現力はマニュアルで得られるものでなく、経験を通して培われる面が大きいのです。

④ 記述問題への対応力
 インター校では学年が上がると毎週のようにレポートが課されることもあります。言語が違っても書くこと自体に慣れているので、字数が多い記述問題に対しても構成を意識して書くことができます。

⑤ 書類選考でのアピール材料
 インター校では、ボランティアや課外活動も活発に行われることもあります。選抜方法が多様化し、志望理由書・小論文・面接等が登場する機会が広がると、そのような経験はアピール材料になります。

 以上挙げてみましたが、これは大学入試だけでなく、高校入試・中学入試でも同じような傾向があります。どの入試においても、インター校経験を持っていることがプラスに働く可能性があるのです。
 ただし次の2つの点を忘れないでください。基本的な話ですが、海外で学習するインター校生は、これがどれだけできるかで、今後の伸びが大きく変わるのです。ご家庭の中で常に意識して、お子様と一緒に確認して頂けたらと願います。

★ ただ単にインター校に通うだけで英語等の学力が伸びるわけではありません。積極的に学校生活でコミュニケーションをとり、課題に対ししっかりと取り組むことが、大きな差につながります。
★ どの入試制度でも、今まで必要とされていた学力(知識・技能)が備わっていることを前提にしています。日本の学校に通う以上、日本式の学習に対応できるよう、海外にいる間に準備を進めることが絶対に必要です。

【第9回】 アクティブラーニングって何?

タブレット

 日本の子どもたちの学習に対する関心・意欲は、世界各国の中でも低い方だと統計調査で出ています。これは私たち教育に関わる日本人がもっと危機感を持つべきテーマだと思います。
 今までの日本の教育は、教師が数十人の生徒を指導する集団授業が中心でした。この形式は、多くの生徒に多くの知識を伝えることができて効率的ですが、学習内容を理解できない生徒も多くなる欠点もありました。これを解決するために、能力別クラス編成・少人数クラス・個別指導等の形が登場し、(欧米諸国に比べればまだ多い方ではありますが)昔に比べれば一人ひとりを細かく見ていける状況にはなっています。
 しかし根本的な問題は解決されていません。1クラスあたりの人数が少なくなっても、教師が一方的に指導するだけでは、生徒のモチベーションを引き上げるのは難しいのです。そこで登場したのが「アクティブラーニング」です。生徒たちがグループ単位で学習し(議論や発表、教え合い等)、受け身ではない姿勢で学習することを目指します。
 内容についても、教室での授業だけでなく、実体験を通して興味・関心を引き出すことも有効な手段になります。インターネット等のITを利用した学習も積極的に活用します。各自でテーマを設定して、時間をかけて論文作成に取り組むのも一つです。このような多様なアプローチを通して、新しい能力を身につけることを図ります。
 このような指導を、私も数学の授業で実践することがあります。実際に立体を作ってみたり、議論を通して公式を導き出したり、グループに分けて問題をチーム戦で競い合ったりします。ここでは私の役割はファシリテーター(進行役)で、生徒たちが自力で答えを出すのを見守る側です。途中で私が説明しようとすると、多くの生徒が「ちょっと待って!」と阻止します。普段の授業以上に彼らは熱中し、答えを出せたときの盛り上がりは相当なものです。「学習塾は受験に向けてのテクニックを教えるところ」とお考えの方には意外に映ると思いますが、テストの点数や合格実績を追い求める前に、私たちがやるべきことはあるのです。
 大学入試改革で今までの知識重視の傾向から、様々な学力を測る方向に変化すれば、学習の在り方や授業の進め方も今までとは異なるアプローチが求められます。入試の選抜方法においても、アクティブラーニングの要素が取り入れられつつあります。時代と状況の変化を踏まえ、私たち教育関係者が積極的に実践に移すことが今こそ必要であり、その意識・行動の差が今後数年で大きな差につながるのではないかと感じています。

【第10回】 中学受験で英語入試が増えてどうなる?

5教科

 以前少し書きましたが、中学受験で英語入試を導入した学校がこの4年間で7倍に増加しています。大学入試改革で英語の民間試験が導入され、実践的な英語力が求められる中で、そのような力のある生徒を取り込んでいきたいのが学校側の狙いです。実際に各学校の先生から聞くと、英語を話せる生徒が多くなればクラスの中で英語が飛び交い、周りの生徒が刺激を受けて結果的に全体のレベルが上昇する流れができるようです。
 ここで対象になるのはインター校や欧米の現地校生ですが、それ以外の生徒(日本人学校生や国内生)も英語力があれば受験できるので、予想以上に多くの受験生が英語入試に集まっています。前年度の入試結果を見ると、英語に力を入れていて人気が上昇している学校には帰国生入試でも多くの受験生が集まり、倍率も急上昇しています。そうなると合格するためにはより高い英語力が求められ、そのための対策が必要となり、さらに全体のレベルが上がり、・・・という循環が生まれます。
 この現状を、中学受験を目指すインター校生のご家庭はしっかり認識する必要があります。「インター生は英語を利用して受験すれば有利になる」という考え、はっきり言って甘いです! 英語だけで勝負するならば欧米の現地校生と同じかそれ以上のレベルを身につけなければいけません。しかもそのような入試タイプの学校はあまり多くないので、一般入試よりも高い倍率(4~5倍)になるところもあります。インター校に通って身につく英語力よりもさらに高いレベルを求められるので、しっかりと入試対策を進めておくことが求められます。
 英語に対してそこまでの経験や自信がなければ、中学受験レベルの国語・算数をしっかり学習する必要があります。帰国生入試は一般入試よりも問題が易しくなると言われていますが、それでも算数は中学入試特有の問題(つるかめ算・流水算などの文章題)が出題されますし、人気が高い学校では出題レベルや競争倍率が一般入試と同じくらいになります。また学校によって入試科目の組み合わせは異なるので、国語・算数・英語どの科目でも対応できるように準備して、受験校を幅広く選択できるようにするべきです。実際のところ、バンコクから中学受験するインター校生は、このパターンで力を発揮できる生徒が多いと思います。
 英語で受験できる中学校が増えて、インター校生にとって選択肢は広がりました。しかしそれ以上に受験者数が増えて、競争レベルや倍率が予想以上に上がっています。「行きたい学校」に合格するには、これからますますレベルが上昇する可能性があることへの覚悟と、それを踏まえての十分な準備期間が必要なのです。