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教育コラム 「先生、その教育もう古いです!」

【第16回】 帰国生入試は一般入試より楽?

情報をGET!

 バンコクにお住まいのご家庭の中には、赴任期間中にお子様が受験を迎えるケースも多いかと思います。受験より前にご帰国されても、滞在年数や帰国後の年数によっては「帰国生」として受験できる可能性が十分あるので、「受験はまだ先」とお考えの場合でも帰国生入試のしくみや情報は知っておきたいものです。
 さて皆様は「帰国生入試」について、どのようなイメージをお持ちでしょうか? 一般入試よりも楽で合格しやすい印象をお持ちの方が多いかもしれませんが、現実はそう甘くはありません。はっきり言って、昔に比べて厳しくなっています! その理由は次の通りです。

① 帰国生が増加している
 この十年間、帰国生の人数は増え続けています。帰国生入試を実施する学校も増えていますが、人気の高い学校には受験生が集まるので競争レベルは上がります。しかも募集定員が多くないので、受験者数が増えると倍率は一般入試より上がりやすくなります。人気のある学校では実質倍率で5倍を超えることもあります。

② インター校・現地校生が増加している
 さらに分析すると、日本人学校生の人数は横ばいなのに対し、インター校・現地校生の人数は大幅に増加しています。英語で学習してきた生徒が増えることで帰国生全体の英語レベルが上昇し、競争レベルが高くなります。特に中学受験では英語入試を導入する学校が急増していますが、帰国生だけでなく国内生でも高い英語力を持つ生徒が増えているので、急激に競争レベルが上がっています。

 このように挙げてみましたが、帰国生入試に長年携わっている私たちでも、この数年の変化は予想以上のものとなっています。ひと昔前なら「帰国生入試なら楽だ」と言えた学校でも、今は一般入試とほぼ同じ問題レベル・競争レベルとなっています。「インター校に通っているから英語入試なら大丈夫」というのは、もう過去の話です。人気のある学校への受験では、帰国生のアドバンテージは「入試の回数が多い」だけと考えた方がいいでしょう。
 この現状を踏まえて、お子様の学習に対してどのように動くべきかをご検討頂ければと思います。バンコクに来たばかりだと、「もう少し落ち着いてから」とお考えかもしれません。その気持ち、分かります。・・・でも他の海外都市の方はすぐに動き始めていることをお忘れなく! 最新の情報を得て、早めに行動に移すことを強くお勧めします。

【第17回】 算数・数学が入試では決め手になる?

数学者

 受験指導でよく言われることの一つに「算数・数学を制する者は受験を制す」という言葉があります。学校によって差はありますが、算数・数学は点数の差がつきやすい科目なので、ここで点数を稼げると(たとえ他の教科が多少弱くても)合格の可能性が高くなるケースがあるのです。
 このような話をすると、よく「うちの子は算数・数学が苦手なので…」とおっしゃる方が多いのですが、そんなことはありません! 受験に向けての算数・数学は、出題されるパターンがある程度決まっているので、最初のうちはできなくても演習を繰り返せばできるようになります。超難関校でなければ、このようなパターン学習を積み重ねることで入試問題に対応できるようになり、合格ラインに届くようになります。
 受験に向けての算数・数学で最低限必要と思われるものは、学習習慣、無理のない学習期間、志望校に対応した学習内容レベル、講師の指導力です。これに加えて、学習内容を楽しいと感じられる授業や、周りの友達との競争があれば、さらに効果的です。もちろん基礎学力は必要ですが、才能やひらめきはなくてもほとんどの受験には対応できますし、それよりも「努力できるか」がポイントになるのです。
 さてここからが本題です。最近の帰国生入試を見ていると、以前と比べて難しくなっている学校が見られます。もし受験者数が急増していなければ、次の二つの理由が考えられます。一つは皆できるようになって差がつかなくなり、合格最低点が上がっている場合。もう一つは、今までよりも読解力や思考力、表現力が求められ、問題自体が難しくなっている場合です。
 大学入試改革を意識して、学校側はできるだけ幅広い学力を持つ生徒に入学して欲しいと考えます。そうなるとパターン化された「知識・技能」だけでなく、より多様な出題形式が登場することが予想されます。そこでポイントになるのは「国語力」で、これは受験対策だけでは対応し切れない、長期間にわたっての積み重ねが必要になります。例えば小さい頃からの読書習慣や、ニュースを通して持つ現代社会への興味・関心、あるいはご家庭の中での会話等も下地となります。
 こう書くと、「これからは算数・数学ではなく国語をやった方がいいのか~」とお考えの方もいるでしょうが、そうではありません! これからの受験でも、パターン化された学習(=知識・技術)は大前提で、それを踏まえて多様な学力が問われます。これからの教育は「AかBか」ではなく「AもBも」求められます。長期的な視野を持って、一緒に準備していきましょう。

【第18回】 アクティブラーニング合宿に行ってきました!

エビ養殖場 グループ発表

 今までは、単語や公式を覚え解法を身につける、いわゆる「知識・技能」が絶対的な学力とされていました。しかしこれからの時代はこれに加え、思考力・判断力・表現力や、主体的に様々な人々と協働する力も「新しい学力」として求められ、学校現場だけでなく大学入試でも評価の対象となります。
 だがそのような学力を身につけるには、今までの授業スタイルでは限度があります。学校のように1クラスあたりの人数が多ければ発表する機会は少なくなり、主体的に動けず埋もれてしまう生徒が多くなります。それに対し学習塾は1クラスあたりの人数は少なくなりますが、テストで点数を取るために知識・技能を重視するので、ほとんどの塾では今までと同じ指導が行われています。今までの知識・技能が大前提として必要である以上、これは致し方のないことだと思われますが、このままでは生徒たちが「新しい学力」を身につけられる機会は限られてしまいます。

朝ごはん 集合写真

 そこで学習空間NOAHでは「アクティブラーニング合宿」を、1泊2日の日程で、ピンクのガネーシャで有名なチャチューンサオにて行いました。今回のテーマは「エビ」で、1日目は現地の養殖場を見学後、エビに関する論文・統計・英文を読み、内容に関する質問をグループでまとめ、タブレットのパワーポイントで資料を作成し、全員が発表しました。2日目も午前中をフルに使ってグループワークを行ったあと、作文を書いて終了しました。(こう書くとハードな内容とスケジュールに見えますが、グループ対抗でゲームをする時間もありましたので、私たち講師陣も含め全員で楽しんでいました。)
 生徒たちはエビというテーマを通して、日本とタイの関係や、環境問題、フェアトレード等を総合的に学習しました。そして現地での体験学習・グループワーク・プレゼンテーション等、今までにない学習スタイルに対して生徒たちは意欲的に取り組み、問題意識と手応えを感じたようです。このような新しいチャレンジを、学習塾というカテゴリーを越えて、引き続き楽しく実践したいと思います。

【第19回】 「協働」って何だろう?

グループ学習

 これからの社会ではコミュニケーション能力が重要になりますが、それは「英語を話せるようになる」「外国人と友達になる」というレベルではありません。お互いの考えを理解・尊重した上で自分の意見を述べ、様々な人々と協力しながら課題を解決し、新しいものを作り出す力だと言えます。これは未来を生きる子どもたちにとって必要不可欠なもので、「学力の3要素」では重要な柱の一つとして「主体性・多様性・協働性」と表現されています。
 しかし今までの日本の教育は、集団の中でルールを守ることや指示に従うことを重要とし、各個人が自分の考えを出して行動することに否定的な場が多くあります。また「知識・技能」を重視し、点数で個人の能力を判断する傾向の強い日本の入試制度では、「協働」のような異質で数値に表しづらい力を合否の判断材料として見ようとしません。特に受験は個人戦で、「競争相手に勝つ」のような考え方を大人側が煽ることもあるので、余計に「協働」のような価値観が根付かない風土になっているのかもしれません。
 このような状況に対し、特に私立の中高一貫校や大学は強い危機感を抱いています。点数を取ることだけに特化した生徒より、多様な学力や問題意識を持ち合わせている生徒の方が入学後に伸びることは、多くの先生方から話が出ています。帰国生入試には、そのような生徒を求める学校側の願いも込められているのです。(そうです、海外生の皆さんは「希望の星★」なのです!)
 確かに海外に住む生徒たちは、これまでの異文化体験等から、他の人たちと関わることに対しての抵抗感が少ないのかもしれません。私たちが実施した「アクティブラーニング合宿」では、学年も性別も異なるメンバーで班を作り、グループ単位で学習から発表まで行いましたが、予想以上に彼らはスムーズに役割分担を決め、準備を進めていました。さらに回を重ねるごとに手順もよくなり、手早くプレゼンの準備を終わらせ、さらに良い内容にしようと工夫していました。日頃の授業とは一味違う生徒たちの可能性に感心したものですが、それは「協働」という状況が触発したのかもしれません。
 帰国生全員がこのような経験を積み、コミュニケーション能力を持ち合わせている訳ではなく、様々なバックグラウンドの違いがありますが、お互いに高め合える存在になれるよう、生徒たちには様々な場を通して学んで欲しいものです。そしてそれを実現するには、周りの大人たちが様々な場を提供できるよう、意識的に動き、時には協力し合いながら作り上げる必要があるのかもしれません。もしかすると「協働」というテーマは、私たち大人にも求められているのかもしれませんね。

【第20回】 インター校生ならば英語入試は大丈夫?

インター校

 バンコクでインター校に通う生徒数は増えていて、学習空間NOAHでも約4割の生徒がインター校生となっています。そして他の海外都市でも同様にインター校・現地校に通う生徒数は増え続け、今では日本人海外子女全体の約4分の3以上を占めています。(意外かもしれませんが、日本人学校生は少数派なのです。)
 これに加えて大学入試改革で英語民間試験が導入されるのもあり、一部の私立の中学校では英語入試等を新しく導入して、インター校生を積極的に取り込もうとしています。英語ができる生徒がいればクラスの雰囲気が変わり、良い影響を与えるケースが多いからです。
 そうなるとインター校生は引く手あまたとなり、入試で有利になる…と言いたいところですが、現実はそんなに甘くありません。特に英語1科目での入試は、この2~3年間で受験者数がかなり増えて、難しくなっています! その理由は次の通りです。

・国語・算数の受験勉強をしなくてもチャレンジできるので、塾に通っていない海外生でも受験できる。
・インター校・現地校出身者が増加しても、募集定員はそのままなので、倍率が急上昇してしまう。
・一部の人気校は教育内容の中身に対する評価も高いが、それ以上にブランド化してしまい、受験生が予想以上に集まっている。
・日本国内でも英語入試対策をメインとする塾が拡大し、エッセイ等をしっかり準備して受験する帰国生が増えた。

 このように英語入試を取り巻く状況は大きく変化しています。高い倍率の競争を突破するには、インター校に通っていた年数だけでなく、文法理解や語彙力、エッセイへの対応力、そして合格に向けての計画的な努力が不可欠となっています。それでも英語圏の学校出身の生徒たちと環境の差もあるので、努力だけでは解決できない面もあります。
 もちろんどんなに倍率が高い人気校でも、ご本人が「行きたい!」と思えばチャレンジすべきです。しかし現実的に考えたとき、その学校だけをターゲットにするのではなく、幅広い学校から選べるようにしたいものです。現在は様々な私学が改革を進めています。学校名だけにとらわれない、教育内容を重視した選択ができるのです。
 インター校生にとってチャンスは広がっていますが、それ以上に競争は厳しくなっています。英語だけでなく、国語・算数(数学)も受験向けに学習すれば、幅広く受験校を選べるようになり、入学後の可能性も広がります。バンコクは英語圏ではありませんが、中学受験・高校受験に向けてしっかり学習できる環境なので、そのメリットを十分に生かしてくれたらと思います。